「自分の意見は捨てなさい」ジブリの鈴木敏夫プロデューサーが語る、仕事が楽しくなる方法

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多くのビジネスパーソン向けのノウハウでは、「自分を確立すること」や「頭角を現すこと」が重要視されています。

そんななか、「自分を捨てることが大切」という仕事術を語る人がいます。それは、世界的に高く評価されるスタジオジブリの映画監督・宮崎駿さんを長きにわたり支えてきた、映画プロデューサーの鈴木敏夫さんです。

そんな鈴木さんの下で仕事を学び、現在は株式会社クラフターの取締役で映画プロデューサー・石井朋彦さんが今年、初の著書『自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』(WAVE出版)を刊行しました。

それを記念して12月6日、“師弟対談”が行われました。ふたりがたっぷりと語った、働き女子にも参考になる“スタジオジブリの仕事術”を前編後編でお届けします。

前編では、「自分を捨てる」ことの大切さや、「長時間働く」とは違う「公私混合」のすすめなどをお送りします。

 

■自分の意見を捨て、人の話をどんどん記録―まずは鈴木さんの「外部記憶装置」になった

石井さんがスタジオジブリに入社したのは22歳、1999年のこと。高畑勲監督作品『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年公開)で制作を経験したのち、『千と千尋の神隠し』(2001年公開)にて宣伝に関わりはじめました。

今でこそ第一線で活躍する石井さんですが、入社当初は若さゆえに「自分が正しい」と思い込み、周りの人から総スカンを食らったのだそう。クビ寸前だったところ、鈴木氏の下で6年間、働くことが決まったのです。

「自分ではなく、世界が間違っている」と考えていた石井さんに、鈴木氏はまず、コミュニケーションの方法を伝授したようです。

石井朋彦さん(以下、石井):最初に言われたのが「自分の意見を一回捨てなさい。自分が何か言おう言おうと思っていると、人の話が入ってこない。おまえの意見なんて、誰も必要としてない」ということ。それから、「若いことの最大の価値は、誰にも必要とされてないってことなんだ。ちゃんと自分の意見を捨てて話を聞いて、ノートに書き出して、会議が終わったあとと寝る前に読み返して、俺に送って」と言われたんです。A4ノートを3日に1冊使い切るペースで書き込んでいました。

すると、だんだんみなさんの言ってることがわかってきて、同時に「こんなに仕事って面白いんだ」「自分は小さな世界しか見えてなかった」と気づいたんです。

鈴木敏夫さん(以下、鈴木):僕としては、石井がどういう人間かは、はっきり言ってどうでもよかった。肝心なのは、僕が頼んだことをやってくれるかどうか。具体的に言うと、アニメーション映画は絵コンテが命なので、その内容を丸暗記してくれる“外部記憶装置”として機能してくれたら、ものすごい助かるわけです。そうやって働いているうちに、石井は“人の言ったことを正確に第三者に伝える”能力に長けていることに気づいたわけです。

石井:鈴木さんは、情報の伝え方を基本から教えてくださいました。「最初に結論を言え」と。あと、宮崎さんはせっかちですぐ反論するから、「ご報告が3つあります」と最初に伝えるといい、とも。
鈴木:そう。「まず3つあるんです」って言い切っちゃう。1つ目をしゃべっているあいだに、2つ目を考えるんですよ(笑)

 

■長く働くとは違う「公私混合」で仕事が楽しくなる

仕事とプライベートは切り分けたいと思っている人は少なくないでしょう。しかし鈴木さんは、公私混合したほうがいいと語ります。それは、「プライベートも仕事に使う」ということではなく、「仕事を楽しくする」ための秘訣だそうです。

石井:「朝起きたら、今日やることを一生懸命やれ。飯食ってるときも、友達と遊んでいるときも、全てそれは仕事に結びつくと。そう考えると、日々の仕事が楽しくなるんだ」と言われたんです。

鈴木:今話題になっている「長時間労働」じゃなくて、日々、日常を仕事とを感情的に分け隔てずに過ごそう、ということです。「ここからオンで、ここからがオフ」って考え方は疲れちゃうと思う。とくに区分けがないほうが、毎日楽しいじゃない?

石井:楽しいですし、疲れないですよね。

鈴木:先のことばかり考えず、目の前のことに集中するのも大事。目標を決めてそこに到達するための努力をする人もいるけど、目標を定めないで目の前のことをコツコツやることで、ひらける未来もある。

僕も若いころは「目標とかあったほうがいいんじゃないか」と悩んだけど、なかなかね、目標なんて持てるもんじゃないし、忙しかったから、目の前のことをコツコツやんなきゃしょうがなかった。それによって自分はどこに行くかはわからないんだけど、ひらける未来があるんだってことを、どっかで体が学んだんですよ。それを石井にも伝えたんです。

石井:ジブリで言うと、『魔女の宅急便』の「キキ」が好きか、『耳をすませば』の「雫」が好きかで、人間性がわかるという話もしましたよね。キキは魔法使いという“血”を使って仕事をしようとする。一方の雫は「小説家になろう!」という夢に向かって進んでいく。僕はどちらかと言うと後者だったんです。「何者かになろう!」と。でも、鈴木さんに「ほんとにそれでいいのか?」って。「キキの生き方のほうがいいんじゃないの?」って言われたんです。

もうひとつ心に残っているのは、「一歩一歩だぞ」と声をかけてくださったこと。何をやっても、目標に達しないことがほとんどじゃないですか。そんなときに、とにかく「一歩一歩だぞ」と鈴木さんは言い続けてくれて。それがすごく、励みになりました。

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右から、石井朋彦さん、鈴木敏夫さん、『崖の上のポニョ』のテーマソングにて“藤岡藤巻”として歌唱をつとめた藤巻直哉さん(同イベント司会)。

【後編はこちら】「他人に必要とされる自分が自分」ジブリプロデューサー鈴木敏夫が部下に教えた仕事術

 

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【参考】

鈴木俊夫(2016)『ジブリの仲間たち』(新潮社)

石井朋彦(2016)『自分を捨てる仕事術 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』(WAVE出版)

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